8.3.@ 何故、日本では多管式メーカーが育たなかったのか

多管円筒形熱交換器は、産業界で膨大な数が使われているにもかかわらず、専門メーカーとみなされる企業が存在しません。巨大工業国たる日本において、多管式の専門メーカーが育たなかったことは、実に奇妙なことです。
このため、現在多くのユーザー殿で更新すべき熱交換器の製作依頼先を探すのに苦労されています。
何故こんなことになったのでしょうか。
その理由の一つは、なんと言っても熱交換器知識の普及でしょう。伝熱工学は、機械系、化学工学系の技術者にとっては、基礎知識であり、多管式熱交換器を設計できる技術者は非常に多いことによるでしょう。
そして、もうひとつの大きな理由は、JIS規格にあると思われます。
「JIS B 8249 多管円筒形熱交換器」は、規格と同時に製作マニュアルと言えるほどに詳細に細かく規定されています。従って、誰が設計しても同じようなものとなり、専門メーカーの方が安価に提供できるものでもありません。
そのため、多管式は、専門メーカーに依頼する必要はなく、実際には、エンジニアリングメーカーやプラントメーカーの技術者達が設計し、外注会社によって製作されてきました。ユーザー企業でも大企業では、製作マニュアルが用意されていて、そのマニュアルに従って担当技術者達が設計し、外注製作されてきました。
こうして、日本で現在稼動している膨大な数の多管円筒形熱交換器は、実質は同じようなものなのに全て特注品、即ち一品設計製図製作品であるという、実に驚くべき結果となっています。
多管式は日本においては、メーカー品化標準化が全く進まず、量産効果もなく、無駄な経費を背負い込んだ原価高の形できました。規格「JIS B 8249」が結果として規制の如く作用して、多管式の技術進歩、経済的発展を制約してきたことは、規格のないプレート型の成長と比較すれば明瞭です。
そして、ここ数年のリストラ時代においては、当然のことながら、一品製作的多管式熱交換器の製作は不採算部門であり、片手間メーカーとしてやってきた多くの企業で撤退廃業の扱いとなり、既設品のユーザー殿が困る状況となった訳です。
この状況を打開して、多管式の標準化を可能とするものこそ、コルゲート管熱交換器DSシリーズなのです。DSシリーズは、基本的に汎用小型器ですが、1-1流路の単純構造の小型器であるが故に共通性を有し、多くの多管式の基本要素、基本単位を構成するのです。即ち、DSシリーズによるモジュール化、多管式をDSシリーズに分解することで安価になり標準化が可能となります。
勿論これからも、特注品が必要な場合も多々存在します。熱交換器の性格上から重要度、危険度の高い用途では、十二分な設計検討、生産管理の上に、厳しい法規による管理が必要なものも数多くあります。
しかし一方、熱交換器としての基本的な品質以上であれば、安価で小さいほど良いという需要も多数存在し、数から言えば、そのような需要の方が大部分なのです。汎用小型DSシリーズは、そういう用途でのモジュール化を目指すのもです。



安い 小さい コルゲート管熱交換器DSシリーズ


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