5.3.D 耐塩酸真空ポンプ |
化学工業、特にファインケミカル、薬品工業等の用途における真空ポンプでは、吸込ガスに塩酸HClが同伴されることが多いものです。機械的真空ポンプでは、標準材質しか製作できませんから、水環真空ポンプでしか耐塩酸真空ポンプは不可能です。
しかし、塩酸HClの耐蝕材となると高価なハステロイがありますが、以下のような選択肢も可能です。
苛性ソーダによる中和運転は、水環技研は多数実績があり、このホームページの各写真を参照して下さい。
PH調整、NaOH水供給が必要になりますが、ハステロイなどの高コストに比べれば、安価となります。
しかしながら、NaOH水運転としても、なるべく耐蝕材としてはSUS316(SCS14)を選択すべきです。苛性ソーダ運転で尚且つSUSではだめで、ハステロイにしているユーザーもあります。このページの最終写真参照。即ち、中和運転とても完全に中和するとは限らないわけで、ごく微量成分による腐蝕もあり得るのです。また、NaOH水の供給ミスが起こらぬように注意を要します。
これまでの説明のように、特に5.3.A 耐蝕表 のように、塩酸濃度が小さければチタンでも十分にもつ可能性があります。塩酸濃度1%以下ではSUS316でもつとされているのですから。但し、真空ポンプは回転機であり、チタンが好ましい所でしょう。
これはケーシング即ちステーターをチタンとし、インペラー即ち回転体をハステロイで組み合わせるものです。水環ポンプは、低温運転、常温運転ですから、異種金属の組合せ製作が可能です。この点、ルーツタイプのように内部で高温発生するが故に熱膨張率の差が致命傷となる機種とは大いに異なります。
塩酸濃度が濃い場合は、全ハステロイ製を選択することができます。
小型は鋳造製で、5.1の写真やこのページの最終写真を参照して下さい。
中・大型は、チタン製ポンプと同じく、溶接製作となります。真空ポンプ構造としては、チタン製真空ポンプTYVTと同じようなものとなります。
チタン製真空ポンプ、ハステロイ製真空ポンプでも凝縮型の真空ポンプは製作可能です。即ち、スチームエゼクターとの連段のジェットリングの小型直結型用の真空ポンプです。
真空ポンプには軸封が必要ですが、当然にメカニカルシールになり、メカニカルシールの構造材としては真空ポンプに合わせることになりますが、スプリングに関しては絶対的な耐蝕材が必要であり、全てハステロイになります。
クエンチ付やダブルメカシも製作可能です。但し、標準真空ポンプSKHシリーズでではこのようなことはできません。
多段のスチームエゼクターとの連段、即ちジェットリング真空排気装置では、塩酸用としては金属材に加えて、更にカーボンが選択可能となります。スチームエゼクターやコンデンサーは、カーボンが最も確実で古くから使われてきています。
但し、塩酸とても低濃度では、即ち微量塩酸の場合では、SUS316やチタンの選択の可能性もあります。
写真は、強酸(ハロゲン化物)用ジェットリング
材質
スチームエゼクター:ハステロイC相当製
コンデンサー:カーボン(ブロックタイプ)
水環真空ポンプ:ハステロイC相当製