5.3.Cチタン製ジェットリング

必要真空度が1kPa(7.5Torr)、0.1kPa(0.75Torr)というような真空度では、水環真空ポンプにスチームエゼクターを前置して連段を構成するジェットリング真空排気装置が必要となります。
そして、このような真空度が必要で、尚且つ強酸等の腐蝕性ガスを吸込む場合、全体を耐蝕材で製作する必要があります。
しかしながら、5.3.Bの耐蝕材耐蝕表からわかるように、強酸とても濃度が小さければ耐蝕性は弱まる、或いはランクの下の耐蝕材でも耐蝕性を有することがわかります。
即ち、低濃度を維持できれば運転可能な耐蝕範囲が広がると言えます。そして、水環真空ポンプは、水で運転するが故に、更にスチームエゼクターとの連段のジェットリングは、駆動スチームが加わわるために、運転濃度を小さくする条件が原理的に出来ているのです。
低濃度維持の理由を直結型ジェットリングJRDの簡略フローシートで見ましょう。
下の図はそのフローです。

このJRDのフローシートよりわかることは、真空ポンプを運転する循環水中の腐蝕性ガスの濃度は極めて低いと言うことです。
理由は単純で、スチームエゼクターの原理上、吸込ガス重量は駆動スチーム重量よりも絶対的に少ないからです。しかも更に、吸込ガス中で腐蝕性ガスの同伴は多くの場合微量同伴と表示されることが大半です。
セパレーターからはスチームドレンが排出されるのですが、この排水濃度で真空ポンプが運転されるのであり、おそらくその濃度比率は、例えば1%以下になるでしょう。
真空ポンプの必要真空度が例えば1kPa(7.5Torr)よりも更に高真空が必要の場合は、スチームエゼクターは2段が必要となります。2段のスチームエゼクターでは、吸込ガスの総重量対駆動スチームの重量比率は相当に小さくなるため、ポンプの運転水中の腐蝕性ガスの濃度は更に小さいものとなります。
このようにジェットリングにおいては、フローシートで腐蝕性ガスの吸込量を重量表示さえしておけばすぐに運転濃度を予想できることとなります。5.3.Aの耐蝕材、耐蝕表からもわかるように、低濃度であればそうそう腐蝕性は強いものではなくなることになります。
例えば、塩酸(HCl)が微量に同伴されるとしても、運転濃度が低ければ、例えばチタンでも可能である、と言うことになります。さすがにSUS316ではまだ心配であっても、チタンにすれば安心、可能で、とてもハステロイまでは必要ない、そういう場合はいくらでも存在するものと思われます。
但し、スチームエゼクターの吐出温度に関しては、少し注意を要します。スチームエゼクターの吐出口近くでは、駆動スチーム温度に近いまで上昇するからです(通常は80℃程度まで)。温度上昇は耐蝕条件としては悪くなります。一方、コンデンサー入口温度に関しては、入口部に冷却スプレーを加えるようなことは可能です。






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