5.2.A メンテナンスコストも評価を

  1. 真空ポンプコストの全体評価
    真空ポンプを稼動せしめる上でのコストを全て挙げれば以下となります。
    1. イニシャルコスト  真空ポンプ購入費+工事費
    2. ユーティリティーコスト(ランニングコスト@)  電力、スチーム、冷却水、潤滑油等のコスト
    3. メンテナンスコスト(ランニングコストA)  
    通常のコスト評価では、殆どAのイニシャルコストのみです。
    Bのユーティリティーコストは、省エネ時代に入ってから少しづつ評価されつつありますが,まだまだ小さいものです。
    Cのメンテナンスコストは、現在でも殆ど無視されています。
    Aのイニシャルコストはほぼ明確です。
    Bのユーティリティコストは工場によってかなり違いがありますが、比較評価は可能です。但し、対象期間の扱いが問題ではあります。
    Cのメンテナンスコストは、評価で難しい面があります。特に化学工業用途においては、空気以外のガスを吸い込むことが多いため個々の用途によっても異なる、つまり使ってみなければわからないことも多いからです。すなわち、Cのメンテナンスコストはユーザー殿が一定期間使ってみた上で始めて正確に評価できる性格のものであるからです。

  2. 既設真空ポンプのメンテナンス評価
    メンテナンスコストは機種によって相当の違いがあります。特に真空ポンプは設備であるために使い出すと少々不満があっても使い続ける例が多いようです。メンテナンスコストはオーバーホール期間とその費用によって最も単純な比較は可能です。長年の使用によってある程度その機種の特性がわかっている工場では、その機種に対して例えば二、三年でオーバーホールをするということが決まっているようです。一定期間でのオーバーホール費用から突然の事故停止のような段階までかなりの差があるが故にメンテナンスコストの評価が難しいのですが、ユーザー殿ではメンテナンスコストの算定は可能ですから是非ともその評価をしていただきたいものです。
    一方、信頼性が高く長期間オーバーホールなしで運転できる機種の方が、結局は安上がりにつく場合も多く、コスト算定を長期で見るか短期で見るか、その評価の度合いをユーザー殿に提示していただければエンジニアリングメーカー殿も真空ポンプメーカーも検討の指針とすることが出来ます。

  3. 新設の場合のメンテナンスコスト評価
    新設のプラントでの真空ポンプのメンテナンスコスト評価は機種選定の上で重要なのですが、前述のように本当のことは使ってみないとわからない面があるが故に極めて難しいものですが、メンテナンスコストを無視されるとAのイニシャルコストとBのユーティリティコストだけで判定されることになります。
    一般に機種選定をエンジニアリングメーカー、プラントメーカー殿がする場合は、技術担当者に比べて、調達担当者はAのイニシャルコストの評価が極めて強くなり、Bのユーティリティコストは極めて小さくなり、更に、メンテナンスコストとなるとまず無視されます。従ってユーザー殿がある程度の指針を示すことがなければどうにもなりません。
    一方、機器メーカーの経営上からは、メンテナンスコストがかかるものほどイニシャルコストを安く設定できるといういささか厄介な問題もあります。例えば熱交換器において多管式とプレート型を比べる場合、多管式のメーカーはその物件においてメンテナンス売り上げが発生することはまずありません。これに対して、プレート型のメーカーはその物件を納入すれば間違いなく数年単位で多数のガスケット(本体に比べて極めて高価です)のメンテナンス売り上げが発生します。すなわち、メンテナンス売り上げが大きい機種ではイニシャルコストは安く設定できるのです。
    また、ガスポンプは液体ポンプに比べてメンテナンスコストが大きい機種であり、極端にはスクリューコンプレッサーのようにメンテナンス契約も必要する機種も存在します。このような機種ではイニシャルコストはぎりぎりまで下げうるものです。
    機種選定においてはこのようなチェックも必要かと思います。

  4. 総合評価はユーザー殿のみ
    メンテナンスコストで定期的なオーバーホールを代表としてあげましたが、本当に重要なことは機器の信頼性です。日本の化学工業は時代の要請として量ではなくて質の競争が重要になってきています。質の向上には生産設備の信頼性が先決課題となるはずです。予期せぬポンプ停止によるプラント停止をコスト算定すると、どういうことになるのか?
    メンテナンスコストを生産設備の信頼性の評価と考えるならば、真空ポンプの機種選定の総合評価はユーザー殿にしか出来ないことになります。総合コスト評価を信頼性まで含めてユーザー殿がその検討指針を出すことによりエンジニアリングメーカー、プラントメーカーもまた真空ポンプメーカーも検討計画の指針を得ることが出来ます。更に長期的には商品の開発改良目標の指針ともなるものです。評価としては難しい点はありますが、メンテナンスコスト評価を機種選定に是非加えていただくようお願い致します。





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