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空気エゼクター付真空ポンプは小型簡便型
空気エゼクター付の長所
空気エゼクター付水封式真空ポンプは、今日では相当に流布しています。その理由は簡便性にあります。 即ち,駆動空気として大気を使用するため,真空ポンプに空気エゼクターを前置するだけで新たなユーティリティーを必要とせずに、運転真空度範囲を広げることができることに あります。
しかも、エゼクターで運動部分がないために,スケール付着や腐蝕や凍結以外に問題となることもないからです。
空気エゼクターの欠点
空気エゼクターの長所はその簡便性にあるわけですが、一方エゼクター連動範囲で連続運転する場合のエネルギー効率では良くない機種であることを認識しておく必要があります。
エゼクターとは、本来スチームエゼクターのことなのですが、真空ポンプに取り付けた空気エゼクターが標準真空ポンプと共に標準化される ことにより、非常にポピュラーになって流布したため、その効率の悪さが意識されていません。特に、スチームエゼクターと比べた時の 顕著な差は理解しておくべきであり、スチームを駆動用として利用できる工場においては、スチームエゼクターの方がずっと効率がよい点、ランニングコストが小さくなる点に留意すべきです。
スチームエゼクターの方が利用価値が高くなるのは、
容量が大きくなる
真空度が高くなる(低圧)
高級材質となる
場合であり、容量境界の一つの目安を挙げれば、普通材質の場合で5m
3
/min、化学工業に多いステンレス製では3m
3
/minとなります。この程度の容量以下では空気エゼクター付が、それ以上ではスチーム エゼクター+水環真空ポンプ=ジェットリングの方が利点が出ます。
空気エゼクター付のエネルギー効率が悪いのは、駆動ガスが空気(大気)であり、吸い込みガスの数倍の空気(重量)を真空ポンプで 吸込み、排気せねばならないからです。これに対してスチームエゼクターは、駆動スチームをコンデンサーで叩き、不凝縮性ガスのみを 真空ポンプで排出すればよいからです。このことは、5−1−B 蒸気主体のガスの吸い込みの事例で明らかです。空気エゼクター付は、丁度その逆をすることになります。
事例比較
例えば、10m
3
/min at 30Torr を空気エゼクター付水封式真空ポンプで連続運転されている場合、これは絶好の省エネ投資対象になります。
この場合に必要な真空ポンプは、30kWクラスになります。
これをジェットリング=スチームエゼクター+水環真空ポンプで計画すれば、駆動スチーム量 70kg/h、真空ポンプ電力 11kW で可能です。これでも、相当の省エネとなるのですが、実際には吸い込みガスは全量空気ではなく、水蒸気同伴であることが多くなります。仮に、50%が水蒸気であるならば、ジェットリングでは、真空ポンプは 5.5kw のもので可能と なります。
このランニングコストの差は、工場によってユーティリティコストには随分差があるものですが、それにしても極めて大きなものとなります。
既設で容量の大きな空気エゼクター付真空ポンプがある場合は、このように絶好の省エネ投資案件となりますので、是非御検討下さい。
容量の大小により最適機種が異なる
小容量では、空気エゼクター付はスチームが必要でないため、場所を選ばず便利に使える長所がありますので、既設の省エネ検討では5m
3
/min以下の空気エゼクター付では 敢えて検討する必要はないかと思います。
新設の検討では3m
3
/min以上は両方を比較検討する方がよいでしょう。
このように容量の大小によっても最適機種が異なる点には注意を要します。
小容量では簡便さの評価が大きくなります。容量が大きくなればやはりランニングコストが重要となるでしょう。
この観点から機械的真空ポンプも小型機では有用なことが多いものです。
一方、ジェットリングは比較的容量が大きくなるほど有用となります。
高真空ほどジェットリングが省エネとなる
上の事例では、30Torr(4kPa)でのものでしたが、真空度が上がるほどに空気エゼクター付とジェットリングとの差は大きくなります。特に、真空度10Torrが必要となれば、空気エゼクターではかなり難しいことになり、性能的には劣るからです。更に、5Torrとなれば、空気エゼクター付では、2段の空気エゼクター+水封式真空ポンプなりますから、この真空度では、もう絶対的にジェットリングの方が優れます。
材質での違い
省エネ比較検討で大事なことは、イニシアルコストとランニングコスト、それぞれでどうなるかです。この点で、材質、即ち、全鉄製とステンレス製とではイニシアルコストが大きく違いますから、ランニングコスト差の評価も変わってきます。
ただ重要なことは、ステンレス製はイニシアルコストが大きくなるわけですが、真空ポンプが小さくなる方が価格的に下ると言う利点がある訳です。即ち、ステンレス製の方が、ジェットリングの方が有利になる場合が多くなります。
更新期こそ改善のチャンス
既設で問題なく運転が出来ている場合でも、省エネ投資の回収期間が早ければ、変更すべきことにもなります。しかしながら、既設を更新すべき時期であれば、共に新設扱いでイニシアルコストが算定されることになります。新設の場合は、より省エネ性が評価が高くなるわけですから、更新期こそ改善のチャンスとなります。