5.1.B 水蒸気主体のガスの場合

凝縮性ガス同伴の吸い込みにおいて圧倒的に多いのは、水蒸気主体の場合です。化学工業や食品工業においては、 真空下減圧下で蒸発,濃縮、乾燥をする工程は実に多いものです。
これらの工程に必要な真空ポンプが吸い込むべきガスは、僅かの漏れ空気と同伴水蒸気が主体となりますが、ガスと してはその比率では水蒸気主体のガスとなります。
また、空気と水蒸気以外に少量微量の腐蝕性ガスやスケール付着性ガス成分が加わることも多々あります。
そして、水蒸気主体のガスを吸い込む真空ポンプとしては、特に水蒸気量が多くなればなるほど ジェットリング=スチーム エゼクター+水環真空ポンプ が最適であり、且つ容量が大きくなればジェットリングしかありません。
以下、このことを実積例をあげて説明致します。

事例1 200JR−1ST+50TYV・Cの場合
この詳細仕様は,5−4−@ のフローシート参照
吸込容積量は,100m3/min、吸込圧 15Torrです。
空気 6kg/h、水蒸気 86kg/hですから、95vol%が水蒸気と言うことになります。
100m3/minの大型機ですから,機械的真空ポンプでは,特殊大型機を除き多くの機種では、まず1台では不可能なものです。
本件では、さらに腐食性ガスも含まれるために、ステンレス製が必要で、機械的真空ポンプでは、材質およびメンテ性で不可能なのですが、そのことを無視して比較すれば、数台に分割して総電力は180kW程度と なります。
然るに、上の 200 JRでは、吸込水蒸気86kg/hの大半は駆動スチームと共にインターコンデンサー内で凝縮されます。 残りの不凝縮性ガスである空気とその同伴の水蒸気を後段の真空ポンプで吸えば良い訳で,後段の水環真空ポンプは何と5.5kWと 小型で可能となります。
ランニングコスト比較をするならば、機械的真空ポンプ180kW対スチーム180kg/hと電力5.5kWとの比較となります。価格的にも200JRの方が はるかに安価であり、且つメンテ性、信頼性では総計180kWの回転体に対して5.5kWの回転体の違いとなります。
このように、凝縮できるガスを真空ポンプで圧縮するほど損なことはないのです。水蒸気は凝縮させて、残りを真空ポンプで大気に 放出する、これが、最も技術的に経済的に合理的なのです。
但し、逆に容量がこの事例の100分の1の場合を考えれば、ユーティリティーの種類を少なくする小型簡便タイプの方が実用性があるともいえます。すなわち、機種の向き不向きは容量によっても大きく異なることは注意を要します。
本実績例のように大きな容量となると、そもそも比較検討自体がナンセンスになるほどに差が大きくなります。

事例2 100JR−1S+SKH542・C
これは、既設ベーンポンプ内部2段タイプ,3台で合計45kWからの取り替え物件です。
目的は、省エネと信頼性の改善です。
代表仕様は、 3kPa=22.5Torrにて、25m3/minであり、空気6kg/h、水蒸気30kg/hとしています。5−4−@ フローシート参照
取り替え検討では真空乾燥装置の漏れ空気の経年変化による変動余裕を大きく取っています。それでも水環真空ポンプは7.5kWでその真空ポンプの大きさは、 既設ポンプの1台に比べても小さなものです。しかし、主体の水蒸気をインターコンデンサー で凝縮させる限り,真空ポンプは小型で十分にやれるのです。
省エネの比較は,スチーム量64kg/h、電力7.5kW対ベーンポンプ3台、45kWの比較となります。
メンテ性の改善では、潤滑,冷却油の垂れ流し運転の問題とか,2年程度でオーバーホールを必要とする,等が大幅に改善される ことになります。

省エネのすすめ
事例2は既設ポンプの切り替え例です。機械的真空ポンプの総電力は45kWでしたが、このクラス以上の真空ポンプの既設の真空ポンプで,水蒸気主体のガスの 吸い込みの場合は、ジェットリングに切り替えることで大いに省エネが図れます。
更に、省エネのみならず、信頼性、耐久性でも 改善され,メンテナンスコストも低下します。但し、スチーム、冷却水が必要となります。
総合的には、相当の改善が可能なため、機械的真空ポンプを多数台使用の場合は、特に検討をお勧め致します。






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