5.1.@ 化学、薬品、食品工業用真空ポンプの必要事項

真空ポンプには色々な機種が存在します。清浄空気を吸う限り、いずれの機種も日本製ならば問題なく使えます。
しかるに、空気以外例えば水蒸気が加わるだけで不都合を生ずる機種が存在します。潤滑油を必要とする機種、油回転やレシプロです。
真空ポンプで色々な機種が存在する理由がここにあります。
化学工業、薬品工業、食品工業の真空ポンプの多くは、ほとんどの場合空気以外のガスを同伴します。むしろ、空気以外のガスが主体となります。
機種選定ミスこそが最大の損害をもたらします。ポンプメーカーや真空ポンプそのものの出来不出来よりも、用途に適しない、そのような機種選定こそが最も被害を大きくするのです。
事故が起こって後、何とか応急対策をしても、適しない機種を使っていることは恒久対策が取れていないと言うことです。恒久対策とするには、用途に適した機種に変更せねばならず、周辺のユーティリティー関係も変更工事が必要となります。一般企業では予算の関係上(固定資産の税務処理上のこともあり)、なかなかそこまでは実行しにくい面がありますので、不安と不満を抱えながら我慢して運転を続けねばならず、実務担当者の負担が続くことになります。
「真夜中に叩き起こされて、『また真空ポンプが止まりました』と、電話連絡を受けるほど情けないことはありませんよ」 ある顧客の述懐ですが、同様の表現を何回か聞いています。

空気扱いの危険性
機種選定ミスを避ける第一は、ガスの性状をを含めて運転条件を出来るだけ詳しく仕様書に書いて、真空ポンプメーカー側に検討見積計画させることです。
特に、真空ポンプメーカーのカタログの標準型番を指定して購入するようなことは、絶対してはいけません。仕様書なしで型番指定をすれば、自動的に単純空気扱いとなり、メーカー側も検討不要或いは検討不能となり、空気以外のガスによる事故の責任は、全て購入者側運転者側の責任となってしまうからです。しかも、トラブルを予想しながら売り込むような営業マンも存在する、と言うより、それが営業マンの本性でもあるのですから。メーカー責任でなければ、次には予備機を売り込めることになりますから。
上のことは、機械的トラブルについてですが、性能でも大きな誤差を生ずることがあります。
空気エゼクター付水封式真空ポンプやそれを後段に持つメカニカルブースターで、有機ガスを吸込む場合が問題です。エゼクターでは、吸込ガスの重さ、即ち、分子量によって性能が変化します。特に、化学工業用では、殆どの場合有機ガスを吸込むのですが、通常は空気よりもその平均分子量は大きくなります。平均分子量が大きいガスでは、エゼクターは性能低下をし、その性能低下を補助ポンプとするメカニカルブースターも性能低下するのです。詳しくは、
4−2−B エゼクター性能の分子量補正について
5−2−F メカニカルブースターの重分子低減
を参照下さい。
重分子ガスの吸込み時は、大幅に性能低下するにもかかわらず、型番指定では、或いは容積量のみの指定ではAir 扱いとなり、重分子による性能低下は無視されることになります。そして、その責任は、購入者のものとなるのです。
容積量で仕様表示をする場合は、必ず平均分子量を明記すべきです。


化学工業、薬品工業、食品工業において真空ポンプを必要とするプロセスに共通する特徴、真空ポンプ側から見たフローの大筋は、図のようになります。


                    図:化学、薬品、食品工業用真空ポンプの典型的フロー

これら化学工業用フローで真空ポンプの選定に必要な特徴をあげます。
a.水蒸気、有機ベーパー等凝縮性ガスの同伴
  機械的真空ポンプの多くは、空気吸引を前提にしているので、キャビテーション的問題を起こしやすい。
  凝縮性ガスの同伴吸込み時には湿式真空ポンプがよい。
b.腐蝕性ガスの同伴
  機械的真空ポンプの多くは、標準材質でしか製作できません。
  耐蝕材、耐酸材での製作が可能な機種は、極めて限定されています。
c.昇華物、凝固物、析出成分、重合物等が微量であっても吸込まれる場合
  付着物対策が必要。
d.毒性ガスの同伴
  臭いや毒性のある排気、排水をしないような処理が必要。

これらの化学工業に代表される運転条件には、単純空気を対象に開発された機械的真空ポンプでは、程度の差はあれ適しないことが多いものです。
一方、水環技研のスチームエゼクターとの連段排気装置ジェットリングJR,JRDは、上の特徴の1項のみならず、全ての運転条件に対応できる真空ポンプを製作可能です。
ファインケミカル分野では、数種類の製品工程をバッチ操作にて運転することも多いのですが、このような用途では、万能型の兼用機が必要となります。ジェットリングは万能型も製作可能なのです。
化学工業では、新設プラントにおいては予期せぬ微量副生成物を生ずることもあるようです。このようなプラントでは、真空ポンプの適、不適も実際に使ってみてわかることになります。従って、最も信頼性の高い機種であるジェットリングを選択することは堅実確実な手法とも言えます。





150JRー2STJ+50TYV・C
40m3/min at 2 Torr
全SUS316・SCS14製


このジェットリング連段排気装置は、24もの生産工程の排気を兼用運転できる万能機の依頼を受けて、設計製作納品したものです。














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