7.2 D 1作動型水環圧縮機TYシリーズの旧2作動型に対する長所


ステンレス製水環圧縮機TYシリーズや塩素ガス用TYL, TYTが、従来型よりも格段に高性能なのは、下図に示すように1作動型と2作動型の違いにあります。
汎用真空ポンプの領域では、性能、電力、騒音のために、オイルショックを契機として1作動型への転換が急速に進行しましたが、圧縮機は特殊用途であることと下表の特徴比較の荷重相殺の利点のために、2作動型が製作されてきました。
しかし、(株)水環技研は、圧縮機は真空ポンプよりもはるかに所要動力が大きく、しかも連続運転が多いために、圧縮機こそ原理的に優れている1作動型で少しでも電力を小さく設計すべきである、と考えて開発を続け完成したのがステンレス製圧縮機TYシリーズです。
ここで水環圧縮機TYシリーズと従来の2作動型圧縮機との特徴を比較します。

        従来の圧縮機                       水環圧縮機 TYシリーズ
       2作動 内気口 型                     1作動 側気口 型
          1回転で2回の吸込圧縮排気              1回転で1回の吸込圧縮排気
          インペラーの内周面からガスが出入り       インペラーの側面からガスが出入り
          摺動面は円筒面                      摺動面は平面

従来の圧縮機
2作動 内気口 型
水環圧縮機 TYシリーズ
1作動 側気口 型
羽根枚数と
性能
20枚  10枚/1作動
      5枚/圧縮排気工程
18枚  18枚/1作動
      9枚/圧縮排気工程
なだらかな吸込圧縮で高性能
所要電力 電力 大 電力 小  性能良好
  大型 15〜20%の節電
  小型 20〜30%の節電
インバーター
制御
インバーター利用不可(2作動型の性能不安定性と内気口型インペラーのねじり振動の危険性によって)
バイパス制御のみで、節電にならない
大幅な回転速度変化にも安定した高性能につき、利用可能。
節電効果大
摺動面
最小隙間
摺動面が円筒面で洩れ対象の面積が大きく、羽根枚数が少ないために、ローターとステーターの最小隙間を小さくせねばならない。 摺動面は軸に垂直な平面でローターとステーターの最小隙間は、内気口型より大きく取れる。
耐久性
性能低下
最小隙間が小さく、羽根枚数が少ないので、わずかの腐蝕でも性能低下は大きい。 羽根枚数が多いので、仮に腐蝕により隙間が広がっても、性能低下が少ない。
騒音
羽根枚数少→排気変動大→騒音発生
95〜110dBA
高周波の本体透過音

80〜95dB(A)
2作動型に比べて15dBA程度低い
高周波の本体透過音が小さい
振動
ラジアル荷重

軸強度
対称位置で2作動するため、差圧によるラジアル荷重が相殺される。
・・・軸強度はトルク伝達分のみでも可。
   シャフトは細く長い
吸込側と吐出側との差圧によりラジアル荷重が発生。
・・・軸強度が必要。
   シャフトは太く短い
軸受
ボールベアリングで可

大型はローラベアリングとなる
軸封
メカニカルシールのフラッシング ポンプ構造が複雑なため、セルフフラッシングが困難。
・・・外部フラッシング必要。
サイトグラス、ストレーナーも必要。
ポンプ構造が簡明なため、内部でセルフフラッシングが可能。
起動停止衝撃

ステンレス製
軸強度が弱い(シャフトが細長い)
摺動面が軸に平行な円筒面。
起動時停止時には、水の量が非対称となり、圧力バランスが崩れ、衝撃的ラジアル荷重が発生する。
・・・衝撃によるわずかの軸ブレでも
   接触し易い
ステンレスではON・OFF時には、焼付回転不能を起し易い。隙間大とすると、性能低下。
軸強度が強い(シャフトが太短い)
摺動面が軸に垂直。



・・・衝撃による軸ブレが出ても
   接触しにくい。

ステンレスでも高性能を保持
補給水(液)
クーラー循環時
(クローズ
 システム)
構造が複雑なため、補給水(液)の自吸式は困難。
 ・・・循環ポンプが必要

一定量設定。
吐出側と吸込側との圧力差で補給水(液)の自吸式が可能。
 ・・・循環ポンプは選択可能

概略・成り行き水(液)量で良い。

更に塩素ガス用圧縮機の比較を続けます。
1.乾き塩素ガスの圧縮  濃硫酸にて運転  TYLシリーズ

従来の圧縮機
2作動 内気口 型
水環圧縮機 TYLシリーズ
1作動 側気口 型
標準材質 ミーハナイト鋳鉄   ステンレス SUS、SCS
耐蝕性 わずかな腐蝕で性能低下が大きく出る。
内部に回転体に向けてネジ止めがあり、ネジの腐蝕、ゆるみが起こるため、プロテクターが必要。
ステンレスにつき、耐蝕性良好。
停止中の固着 摺動面積大で隙間が小さいために、硫酸特有のスケールで固着し易い。
1日の停止でも回転不能となることが多い。
摺動面が平面で隙間大のため、固着しにくい。
ステンレス製 シャフトが細長く、円筒状摺動面の隙間が小さく、起動停止衝撃により焼付固着を起こしやすい。
→隙間大とすると、性能不良。
標準材質
液面調整タンク 必要 不要

2.湿り塩素ガスの圧縮  湿り塩素ガスは、極めて腐蝕性が強く、耐蝕材としてチタンが必要です。

チタン製水環圧縮機 TYT により、水運転が可能
  従来の圧縮機
2作動 内気口 型
チタン製水環圧縮機 TYTシリーズ
1作動 側気口 型
溶接構造 構造が複雑なため、チタン溶接での製作が困難。   全チタン製溶接構造を開発。
チタン材の特性 チタンはステンレスよりも焼付きし易い。
シャフト剛性が弱い。
太いシャフト構造が可能である。
メンテ性   水運転のためにメンテ性良好。
価格   水運転のため小型化が可能で、安価。
TYLと同程度。




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