6.1.D構造矛盾型ポンプ=分解修理不能型ポンプ

回転式真空ポンプでは、作動原理上シャフトにラジアル荷重がかかるため、インペラーとシャフトの嵌め合いは締まり嵌めが必要です。締まり嵌めにしないとインペラーとシャフト間に摩耗を生じ、シャフト事故や接触事故を起こすからです。
この現象は、ベアリングの嵌め合いが甘いと、ベアリング下のシャフトに摩耗を生ずるのと同じことで、回転体ではよく知られたことです。因みに、(株)水環技研の全てのポンプは、焼き嵌めとしています。従って、インペラーとシャフトは分離不可です。それでも、分解修理組立てが可能な構造としています。
さて、真空ポンプの中には、ポンプとしては1台でも、内部において2段(或いは3段)にした機種が存在します。問題は、1本のシャフトにインペラーが2個、或いは3個ついた構造のポンプです。
2個のインペラーで、前段と後段を構成するには、その間をステーターで仕切っていなければならず、分解修理にはその締まり嵌めのインペラー2個を外さなければなりません。このため、完全分解修理は、極めて困難になります。
このようなポンプを弊社は、構造矛盾型ポンプと呼んでいます。即ち、締まり嵌めを必要とするインペラーを複数内蔵する多段ポンプ構造です。
このような構造矛盾型ポンプには、水封式真空ポンプでは内部2段型が、ルーツタイプでは内部2段型、3段型があります。多段ルーツとなると、シャフト2本で各シャフトに複数のインペラーが付き、更に外側にタイミングギアが付く構造で、極めて複雑です。これらのポンプでは、正確な構造図(説明用の簡略構造図ではだめ)で分解手順を検討すれば、締まり嵌めの必要性に気付くだけで、構造矛盾の理由が納得できると思います。
構造矛盾型ポンプは、実質的にはユーザーでは分解修理不能です。何とか分解できても、小さな回転隙間4面、あるいは6面で組立てることはまず不可能です。
このため、少しでも分解組立を容易にと、インペラーシャフトの嵌め合いを甘く(キー止め)して、シャフト事故を起こしているメーカーもあります。この嵌め合い部分は、ポンプのプロセス側であって、吸込みガスや水、液にさらされる構造になっています。また、トラブルを発生すると、対応を逃げるメーカーすらありますが、基本の構造に矛盾があるため一度事故を起こすと、応急対策はともかくも、恒久対策が取れなくなるからでもあります。
構造矛盾型ポンプは運転条件が容易で何事もなければよいのですが、一度腐蝕、付着、摩耗、回転不能等のトラブルを発生すると、メーカーに修理依頼を出さねばならず、その場合は時間がかかる上に、新品価格程度の費用となりますので、実質は使い捨てポンプに等しくなります。ポンプ寸法が大きくなるほどポンプ構造の矛盾の影響は大きくなり、逆に小型機は問題の程度は小さくなります。
分解修理不能型ポンプは、そのことを理解した上で特に小型機等で家電製品のように使い捨てとわり切って使うならば良いのですが、そうでなければ生産設備機械としては、疑問です。



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