１．チタンは耐蝕材として、特に強酸に対して、極めて優れています。
チタンはステンレスのSUS316（SCS14）よりもはるかに耐蝕性に優れ、ハステロイ（高Ni鋼）に近い耐蝕性を持っています。
この優れた耐蝕性を持つチタンで、全チタン製の水環真空ポンプを製作しております。下の写真は湿塩素ガス用の真空ポンプです。wetCl2ガスはハステロイでもだめであって、チタンのみが耐蝕材となります。
チタンは、鋳造で製作すると極めて高価となるのであって、全部品溶接で製作せねばなりません。従って、下の写真のように独特の溶接構造となっています。

全チタン溶接構造の水環真空ポンプ　５０ＴＹＶＴ

２．ステンレスのSUS316（SCS14）で腐蝕する場合、これまではハステロイ（高ニッケル合金鋼かないと考えられていたようです。しかし、強酸、強腐蝕性のガス、液でもチタンでも十分に耐蝕性を持つことが多いのです。
チタンの耐蝕性に関しては、５．３．�Aの耐蝕材、耐蝕表を参照下さい。
一方、水環真空ポンプは水運転が前提です。従って、例えば、塩酸（HCl）でも循環運転水中の塩酸濃度を増大させない限り、高価なハステロイを使わなくてもチタンで十分もつのです。
即ち、吸引ガス中に微量の塩酸が同伴される場合でも、HClガスの重量ではわずかなのであって、それよりも重量で多い目の水を加える、即ち微量注排水方式とすれば、チタンでも塩酸に持つのです。

３．これまでチタン製真空ポンプがあまり知られなかったのは、普通材質の標準量産品メーカーには手におえなかったからです。
チタンは、鋳造で製作すると極めて高価となり、ハステロイ以上の価格となるからです。
その点ハステロイは鋳造可能のため、価格が極めて大きくなるだけで製造は可能でした。
チタン製の真空ポンプを生産するには、チタン溶接で製作するしかないのです。
水環技研では、チタンで溶接構造で製作すべく、従来の鋳造製の水封式真空ポンプとは全く異なる新たな溶接構造のチタン製水環真空ポンプ　ＴＹＶＴ　を開発し、既に、湿塩素ガス（Cl2）用途に多数納入しています。
そして、このチタン製水環真空ポンプ　ＴＹＶＴ　では、湿塩素ガス用と言う、チタンしか使えない用途のみならず、これまでハステロイでなければ不可と考えられた腐蝕性ガス、液用途に対して、ハステロイよりも安価にチタン製真空ポンプが提供できるようになりました。

４．このように全チタン製水環真空ポンプが可能となれば、化学工業で往々にして現れる腐蝕性ガスの同伴プロセス用の真空ポンプとして、チタン製真空ポンプはなによりも有用です。
そのことを表記すれば、耐蝕性でも価格でも下の関係となるでしょう。
　　　　　SUS316＜＜チタン＜ハステロイ
このように耐蝕材を必要とする場合には、チタンは極めて重要且つ有用な材質となります。

全チタン製　大型水環真空ポンプ　１５０ＴＹＶＴ　３７kW