- 水環ポンプ以外のガスポンプ、ルーツ、油回転、レシプロ、スクリュー、ベーンポンプ等は、標準材質でしか製作できません。
そのため、腐蝕条件下での運転に弱く、苦肉の策としてメッキ・コーティング手法がメッキ・コーティングメーカーによって開発されてきました。但し、使われているのは、これらの機種の内、せいぜいルーツのみです。
しかし、所詮は便法、間に合わせでしかありません。メッキ・コーティング手法は、後述の如く、回転ガスポンプでは重大な事故の原因となる危険性があります。
- (株)水環技研の製作範囲中の水環真空ポンプ、水環圧縮機、エゼクター等の機器は、全て耐蝕材で製作可能です。
この場合、無垢の素材で製作しております。即ち、強度構造部分もひっくるめて部品全体を同一耐蝕材で製作しています。また、製作可能な耐蝕材としては、鋳造・溶接可能な全ての金属で、運動部分のないエゼクターでは、カーボン、プラステック等でも製作可能です。
(株)水環技研では、本物の耐蝕材で製作しているのですから、メッキ品を作る必要はなく、メッキ・コーティング、ライニング手法は一切扱っておりません。
メッキ・コーティング手法は、結構高くつくものですが、コストよりもわずかの傷やピンホール等が重大事故の原因となり、しかも、修理不能となることが多く、意味がないからです。
(株)水環技研は、生産設備機械は単純明快な構造ほど優れている、との信念を持っています。
- メッキ・コーティングにより、少しでも運転期間が長くなればよいと考えるのは大きな誤りです。
単に腐蝕だけならば、性能低下を生ずるだけのことであって、ある程度は運転を続けることが可能です。しかし、メッキ・コーティングは、逆に事故・運転不能を引き起こす可能性が強いのです。
回転ガスポンプでは、原理構造上、局部的に高速流を生ずる細隙が必ず存在し、しかもそれらの細隙がローターとステーターとの摺動面相当であることが多いのです。メッキ・コーティングとは、わずか2,30μの薄膜でしかなく、純粋清浄な流体で緩やかな流れであれば、問題はないでしょうが、現実の運転においては種々の悪条件が加わってきます。
メッキ・コーティングでは、小さなすり傷やピンホールができれば、それが直ちに薄膜の剥がれの進行を引き起こし、その薄膜が噛み込み異物となり、連鎖的に傷口を広げ回転不能となります。しかも、局部的剥がれが起こってしまうと、メッキ・コーティング手法では修理不能となり、主要部品は新品に交換せねばならず、納期価格も問題となりえます。
のみならず、新品を購入しても、それは単なる応急対策品でしかなく、恒久対策を取るには、本物の耐蝕材で製作したポンプ、即ち別の機種(水環ポンプやジェットリング)に変えねばならず、周辺機器までやり変えざるを得なくなるでしょう。
水ポンプ、液体ポンプの分野では、ゴムライニングポンプが耐スラリー用、耐硫酸用等で、機種として確立されています。ゴムライポンプはむしろ、ゴム製ポンプに補強の鉄材が入っているようなものと考えるべきでしょう。ゴムライニングでこのようなことが可能なのは、ガスポンプと液体(水)ポンプとで、ポンプの成立ち、構造に決定的な違いがあるからで、ガスポンプにはゴムライポンプはありません。
- 予算の都合上、どうしてもメッキ・コーティング品を使わざるを得ない場合、購入前にメーカーに対して、メンテ上の対応を十二分に確認しておく必要があります。メッキ・コーティング手法のポンプメーカーの中には、生産ストップに追い込まれたユーザーの足下を見て、信じ難い高額の修理費を要求するメーカーが存在するからです。
小さな傷、ピンホール、或いは腐蝕によってどのような事故が予測されるか、そしてそれらの修理の可能性はどの程度のものか、特に修理納期と価格、そしてメーカーの対応範囲、これらを確約、文書化しておく必要があるでしょう。
- メッキ・コーティング手法のポンプメーカーの方は、問題なく稼動している事例や比率を強調するかも知れませんが、腐蝕性ガスと言っても強弱相当の幅があり、その程度はユーザー殿にすら使ってみないとわからないものであり、信頼できる統計がある訳でもありません。
ピンホールにより回転不能となった苦い経験を持つユーザー殿は多く、それらの経験、ノウハウを調査されるべきでしょう。
厄介なことは、メッキ・コーティング手法の選択責任は、ユーザー殿にあることです。ガスポンプメーカーは、顧客の指示に従ってメッキ・コーティング業者に外注するだけのことです。事故が起こっても、一切の責任はユーザー殿にある訳で、この意味を御理解下さい。従って、上の文書化が重要となるのです。